相続コラム

相続税の申告を自分で行う方法・手順を徹底解説!注意点やデメリットも

相続税の申告を自分で行う方法・手順を徹底解説!注意点やデメリットも

「相続税の申告を自分で行うことはできるのだろうか」

「自分で相続税の申告をする際に注意すべき事はなんだろう」

相続税の申告にあたって、このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。結論から言えば、相続税の申告は自身で行えますが、基本的にはあまりおすすめできる方法ではありません。相続手続きは非常に手続きが煩雑であるほか、相応の労力と時間がかかります。

そこで、今回の記事では相続税の申告を自分で行う方法はあるのか、またその場合どういった注意点があるのかについて取り上げてみました。

相続税の申告は自分でできる?

結論からいうと、相続税の申告は簡単な手続きではありませんが、自分で行うことは可能です。申告書の書式には計算のやり方はもちろん、記入の際の注意点も記載されているほか、税務署では無料相談も行えます。また、万が一相続税で困りごとがあった場合にはアドバイスを受けることも可能です。

しかし、相続人が多くて複雑な場合や土地が複数ある場合、全てを自分で行うのはやめたほうが無難でしょう。その理由として、相続税には法律が絡むほか、知識のない状態で評価額を算出するのは困難であることが挙げられます。申告内容に誤りがあると過大申告やペナルティが発生する恐れがあるため注意が必要です。

とはいえ、毎年1~2割程度の人は税理士などの専門家に依頼せずに自分で申告しています。相続財産が少ない場合や、まずは自分で挑戦してみたいと考えている人は、自分で申告の手続きを行うのもひとつの手です。

相続税申告が不要なケース

相続した財産の総額が、基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を超えない場合は相続税の支払い・申告は必要ありません。ただし、相続財産の見落としや計算ミスなどにより、申告が必要ないと思っていても、実は申告が必要だったというケースも少なくありません。申告が必要であるかどうかを、しっかりと確認することが大切です。もし、相続税について不安がある場合は専門家に相談するようにしましょう。

相続税の申告を自分で行う方法・手順

相続税の申告を自分で行う場合、以下の手順で手続きを進めていきます。

  1. 相続税に申告に必要な書類を揃える
  2. 相続財産の評価を行う
  3. 遺産分割協議を行い、相続申告書を作成する
  4. 税務署に申告書を提出したのち、納税をする

相続税の申告に必要な書類を揃える

相続税の申告に必要な書類は、以下のように多岐にわたります。

  • 相続人関係の必要書類
  • 遺産分割関係の必要書類
  • 土地・建物関係の必要書類
  • 現金・預貯金関係の必要書類
  • 有価証券がある場合の必要書類
  • 生命保険金(死亡保険金)・退職金関係の必要書類
  • 債務関係の必要書類
  • 贈与関係の必要書類
  • 葬式関係の必要書類
  • 小規模宅地等の特例を利用する場合の必要書類
  • 配偶者の税額軽減を利用する場合の必要書類
  • その他の必要書類

添付書類は相続する財産や利用する特例によって異なるため、あらかじめ税務署に確認しておくほか、疑問点等があった際も早めに問い合わせるようにしましょう。

ここでは、上記のうち「相続人関連の必要書類」と「遺産分割関係の必要書類」、「土地・建物関係の必要書類」について詳しく解説します。

相続人関係の必要書類

相続税申告時に必要となる主な書類は以下の通りです。

  1. 被相続人の戸籍謄本と改正原戸籍
  2. 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 相続人全員の住民票
  5. 相続人全員のマイナンバー確認書類
  6. 相続人全員の印鑑登録証明書(遺産分割協議を行った場合)※原本

なお、「法定相続情報一覧登録図」があれば、上記「1.」~「4.」の書類は不要です。「法定相続情報一覧図」は2017年にスタートした制度で、亡くなった被相続人の相続関係を記載した書類のことを指します。法定相続一覧図を作成の上、法務局で認証を受ければ公的な証明として相続手続きに使えるほか、5年間は無料で写しが交付されます。

導入をきっかけに、それまで相続人に重くのしかかっていた取得費用と手間が軽減されたことはもちろん、相続手続きを簡単に済ませることが可能となりました。

遺産分割関係の必要書類

つづいて、遺産分割関係の必要書類は以下の通りです。

  1. 遺言書
  2. 遺産分割協議書
  3. 印鑑登録証明書
  4. 特別代理人選任の審判の証明書(※特別代理人を立てている場合)
  5. 相続放棄受理証明書(※相続放棄をした相続人がいる場合)
  6. 申告後3年以内の分割見込書(※申告期限内に分割できない場合)

このうち、「4.」~「6.」については必要があれば用意しましょう。また、特別代理人専任の審判の請求書については申請してから発行されるまでに1ヶ月程度の時間がかかるため、なるべく早めに申請を済ませることをおすすめします。

また、「6.申告後3年以内の分割見込書」は次の3つの条件がすべて揃った場合のみに提出が必要であり、そうではない場合には不要です。

  • 相続税の申告が必要な場合
  • 相続税の申告期限までに遺産分割協議が整わない場合
  • 一定の特例の適用を受けたい場合

たとえば、被相続人に配偶者がおらず、現金や預貯金しか遺産がないような場合には適用となる特例がないため、分割見込み書を提出する必要はありません。

土地・建物関係の必要書類

土地・建物関係の必要書類は以下の通りです。

  1. 登記簿謄本(※)
  2. 固定資産評価証明書(※)
  3. 名寄帳(固定資産課税台帳)
  4. 公図または地積測量図
  5. 住宅地図
  6. 賃貸借契約書
  7. 路線価図または倍率表

※登記簿謄本、固定資産評価証明書は課税明細書でも可

このうち、「1.登記簿謄本」についてはこれまでに行ってきたすべての登記事項が記載されている「全部事項証明書」が必要となるので、注意しましょう。

相続財産の評価を行う

相続財産の評価は相続開始時点の時価で評価します。相続人が亡くなった日の時価で評価されることになり、相続税を申告する日の時価ではない点に注意しましょう。相続税は申告納税制度となり、相続人が相続財産を評価することになります。いずれも自身で相続財産の時価を正確に把握することは非常に困難であり、税理士をはじめとする専門家に相談するとよいでしょう。

なお、家庭用財産の相続税評価については以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

あわせて読みたい|家庭用財産の相続税評価における原則と例外!種類別の解説も

遺産分割協議を行い、相続申告書を作成する

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割方法について話し合うことを指します。主に、遺言書が無い場合や遺言書の内容と異なる分割をする際に行われ、開催においては相続人全員の合意を得なければなりません。そのため、行方不明の相続人を除外して話し合いを進めたり、隠し子などの存在を知らないまま話合いを進めたりした場合には、無効となる点に注意が必要です。なお、相続人が遠方に住んでいるほか、心身の事情で協議への参加が難しいケースもあるでしょう。そのような場合、ビデオ電話や電話などで意思を確認することが可能です。

相続人全員が遺産分割協議で合意し、相続財産の分割方法が決まったら遺産分割協議書と相続税申告書を作成します。遺産分割協議書にはどの不動産を誰が相続するのか記載し、相続人全員の署名および捺印が必要です。遺産分割協議書に記載された内容は、基本的に相続人全員の合意がなければ変更できないことも覚えておきましょう。また、協議書を作成した後は、各自が手続きをしやすいよう1通ずつ保管します。なお、すべて原本である必要はなく、原本を1通のみ作成して相続人の代表者が保管し、他の相続人はコピーを手元に残す形でも構いません。

遺産分割協議に時間がかかった場合、相続税の申告・納税期限に間に合わない恐れがあるため、早めに協議を開始することをおすすめします。遺産分割協議が相続人間で整わない場合、家庭裁判所の調停委員会が加わる遺産分割調停が行われます。遺産分割調停でも解決しない場合は家庭裁判所が遺産分割を決める遺産分割審判となることも、覚えておきましょう。

税務署に申告書を提出したのち、納税をする

最後の工程として、ここまでに作成した各種書類をまとめて税務署に提出する必要があります。なお、提出先の税務署は被相続人が住んでいた地域を管轄する税務署となるので、注意しましょう。また、この際にあわせて相続税の納税も行えます。納税は税務署の窓口でできるほか、金融機関で納税することも可能です。

相続税の申告を自分で行う場合の注意点

相続税の申告を自分で行う際には、以下の3つの注意点があります。

手続きをする際は期限を守る

相続税に関わる手続きは先述した通り多岐に渡ります。それぞれに期限が設けられているため、全てのスケジュールを自分で把握・管理しなくてはなりません。もし期限を過ぎてしまうと、控除や軽減の制度が受けられなくなるほか、多くのペナルティが発生してしまいます。

事前に自分で手続きする書類をリストアップしておき、早い段階で提出することが大切です。もし、相続税に関する手続きについて不安がある場合は税務署に相談するようにしましょう。

申告内容を誤るとペナルティが発生する

相続税には複雑な計算が伴うため、申告内容を誤ってしまうケースも少なくありません。たとえば、過大申告をしてしまった場合は、本来支払う必要がなかった税金を納めてしまうことになるでしょう。一方で、過少申告をしてしまった場合、追徴課税となり、本来納めるはずだった税金よりも高く支払う可能性もあります。このような状況に陥らないためにも、書類の不備や計算方法のミスをしないようにすることが重要です。

税務署調査に対応する必要がある

申告した内容に誤りがあった際、税務調査の対象となる可能性があります。相続税の申告を税理士に依頼している場合は、まず税理士担当者へ意見聴取が行われます。ここで問題がないと判断されると調査の対象とはなりません。

一方で、自分で申告をしている場合は、税務調査の対応を自分でしなくてはならないため、この点を考慮しておく必要があります。

相続税の申告を自分で行うメリット・デメリット

自分で相続税の申告をする場合、以下のメリット・デメリットがあります。

メリット

メリットは、以下の2つです。

税理士報酬がかからなくて済む

自分で申告する大きなメリットは、税理士に依頼する費用がかからなくて済むことです。遺産額や相談する内容によっても差がありますが、少なくても数十万円、多い場合には数百万円の費用がかかることも珍しくありません。また、税理士報酬は遺産額に応じて決まることもあり、遺産総額が多ければ多いほど支払い負担も大きくなります。自分でやるとなれば、これらの支払いが必要なくなるのが利点でしょう。

プライベートな情報を知られずに済む

自分で相続手続きを進めることで、相続額や資産の内訳、また特別縁故者(親族以外の相続人)などのプライベートな情報を第三者に知られずに済みます。こうした情報をできれば他人に知られたくない場合、相続税申告を自身で済ませるメリットは大きいといえるでしょう。

デメリット

一方でデメリットは以下の2つです。

手間と時間がかかる

税理士に依頼しないぶん、書類の収集や提出をはじめ、スケジュールの管理までを自身で行わなければなりません。そのため、多くの手間と時間がかかることが想定されます。税理士に依頼すると費用が生じる一方で、これらを任せることが可能です。お金をとるか、手間や時間をとるのか、自身にあった方法を選ぶようにしましょう。

過大申告や過少申告が発生しやすい

先述した通り、相続税の手続きには多くの書類が必要となるほか、記載内容も多岐にわたります。よって、間違えやミスが発生しやすいほか、誤った内容で申告してしまうと、過大申告や過少申告の発生に繋がります。

手続きの際に、税務署で相談すれば大丈夫だろうと思う人もいるかもしれません。しかし、土地評価額の計算など申告の手続き以外の相談となれば、税務署では管轄外の扱いとされる恐れがあります。自分で相続税の申告をして誤りが発生した場合、結果的に税理士報酬を上回る支払いが課せられることも少なくありません。自分で行う際にはこのようなデメリットがあることを忘れないようにしましょう。

相続税の申告を自分でできるケース

下記に該当する場合、比較的トラブルが発生する恐れが低いため、相続税申告を自身で進めることも可能でしょう。

  • 相続同士のトラブルが起こらないと言い切れる場合
  • 特例などの活用により、相続税がかからない場合

相続人が一人であるなど、相続人同士の争いが起きる可能性がほぼないと推定できる場合、相続税申告を自分で済ませてもそれほど問題にはならないでしょう。仮に申告や手続きでミスが生じた場合であっても、親族に迷惑をかけることはありません。

また、特例の適用によって相続税がかからない場合も、そもそもトラブルに繋がるような要因がないため、自身で相続手続きを行えるはずです。

相続税の申告を専門家に相談するべきケース

以下の3つのケースでは、自分で相続税の申告をせずに専門家に相談することをおすすめします。

  • 遺産に不動産がある場合
  • 遺産総額が大きい場合
  • 名義預金や生前贈与がある

遺産に不動産が含まれている場合、相続財産の評価は専門家でなければ難しいといえます。特に土地を複数所有している場合や評価が高額になると予想される場合は、適切な税額を算出するために自分で申告を行うのは避けた方がよいでしょう。

また、遺産総額が1億円を超すと、相続税の税額がかなり高額になります。税額が高い場合、もし何かしらで不備があると追徴課税も高くなってしまうでしょう。そうした事態を避けるためにも、遺産総額が一定額を超えている場合には税理士等に相談することをおすすめします。

名義預金や生前贈与がある場合も専門家に相談した方が安心でしょう。それらがあると、被相続人と親族の間で資金移動が生じることになり、手続きが非常に複雑になります。また、手続きでミスがあれば、関係性も悪くなってしまいかねません。専門家に相談することで、トラブルを防ぎ、円滑に相続税申告を進められるはずです。

相続税申告に関するご相談は税理士へ

このページでは、相続税の申告を自分で行う方法や手順をはじめ、注意点についてお伝えしました。相続税の申告は手続きが非常に煩雑であるほか、個人ですべての書類や必要となる情報を集めるのに相当な労力や時間を要するでしょう。そのため、よほどの事情がある場合を除き、相続税の申告は税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

相続税の申告を自分で進めることに不安を感じている場合は、税理士に相談してみるのもひとつの手です。相続税に特化している数少ない「川口相続税サポートセンター」では、月50件以上の相続相談を受けている実績があります。過去の事例から照らし合わせて提案ができるのが魅力です。相談は無料でできるため、もし不安な点が少しでもある場合は、この機会にぜひ一度お問い合わせください。

監修者 代表 不動産鑑定士・税理士
沖田豊明 プロフィール
講師 代表 不動産鑑定士・税理士 沖田豊明
平成11年に不動産オーナー様・不動産税務の専門事務所として、埼玉県川口市に開業。
不動産と不動産の税務の専門家の両立場から不動産オーナー様の賃貸経営や相続税の申告・税務アドバイスを行っている。
また、最近は自らも不動産賃貸経営を行い、その実務経験を基に、サラリーマン大家さんの不動産投資に関する税務申告やアドバイスを行っている。
円滑な相続・資産承継を目的とした家族信託についても手掛けている。
各税理士会の支部研修等における講師業務も年間約50件程度行っている。
著書:『「地積規模の大きな宅地の評価」の実務-広大地評価の改正点と判例・裁決例 』
共著:『社長の節税と資産づくりがこれ一冊でわかる本』/『相続手続きと生前対策ハンドブック』など