相続コラム

相続税の計算方法は?相続税の試算をした方が良い理由も解説

DATE:2021.12.26

「自分が亡くなった際の相続において相続税がかかるかどうかを確認したい」
「親が亡くなって相続をすることになったけど相続税がかかるかどうかを確認したい」

いろいろな事情により相続税の計算が必要となる場合があります。相続税の試算は簡単にでもしておいたほうが良いのです。

その理由を、相続税の計算方法と一緒にお伝えします。

相続税額はどのように算出されるか

相続税額はどのように計算をするのでしょうか。 相続税額は、主に以下の6つのステップに分けて計算をします。

 

  • 1遺産総額を計算する
  • 2遺産の総額から基礎控除額を引く
  • 3課税遺産総額の計算をする
  • 4相続税の総額を計算する
  • 5相続税の総額を実際の相続割合で分けなおす
  • 6各相続人の相続税納付額を計算する

計算方法は不公平がないようにするために非常にテクニカルに行われており、一般には非常に難解です。

 

相続税の申告・納税は、遺産総額が基礎控除額を超える場合にのみ発生するので、もし基礎控除額を超える遺産がない場合には、2つめのステップで終了しても大丈夫です。

遺産総額を計算する

まずは、被相続人の遺産総額を計算します。 遺産の総額は基本的には被相続人となる人が有している遺産を合計したものです。

 

遺産の中には株式のように、時期によって値上がり・値下がりするようなものがありますが、被相続人が亡くなった日を基準に考えます。

 

遺産の中には、不動産のように、鑑定をする目的や人によって価値が異なるものもあります。 相続税との関係では、「財産評価基本通達」に従って計算をします。

 

いくつか代表的なものでいうと

  • 預貯金は利息も含めて死亡時の残高で計算する
  • 自動車は中古車買い取り業者の買取価格
  • 土地や路線価または固定資産税評価額をもとに、どのように道路と接しているか・不動産の形状など土地の事情を踏まえて計算する
  • 建物は固定資産税評価額によって計算
  • 上場株式は一定期間の平均株価からもっとも低いものを計算
  • 非上場株式は会社の財務状況から計算

相続税の中でも不動産の価格を最大80%と大幅に下げることが可能な、小規模宅地の特例は、この段階で計算することになります。

 

遺産の中には、資産としての評価はあっても、遺産として計算しない、墓地・墓石・仏壇・位牌などの祭祀財産や、国または地方公共団体に寄付した財産のような非課税財産があります。

 

また、生命保険金や死亡退職金のように、本来は相続財産ではなくても、みなし相続財産として、遺産に計算しなければならないものもあります。

遺産の総額から基礎控除額を引く

遺産の総額から基礎控除額を引きます。 基礎控除額は

  • 3,000万円+(600万円✕法定相続人の数)

で計算されます。

 

たとえば、父が亡くなって、母・子2人で相続した場合には、

  • 3000万円✕(600✕3)=4,800万円

が相続税の基礎控除額です。

 

基礎控除額については平成27年1月1日に改正があり、 それ以前は 「5,000万円+(1,000万円✕法定相続人の数)」 で計算されていました。

 

古い情報をもとにすると、基礎控除額の計算を誤ることになるので注意しましょう。

 

代襲相続が発生していて相続人が増えて基礎控除額が上がるようなケースがあったり、養子の基礎控除額計算上の上限(実子なし:2人・実子あり:1人)などにも注意が必要です。

課税遺産総額の計算をする

実際に課税される遺産の総額である、課税遺産総額を計算します。 課税遺産総額は、

  • 遺産総額ー基礎控除額

で求めます。

 

基本的には、遺産総額が基礎控除額を超える場合には、相続税を納める必要があります。

 

ただし、小規模宅地等の特例を利用する場合には、宅地を80%評価減すると基礎控除額を下回り相続税の納税が必要なくなる場合があります。

 

相続税の納税が必要なくなる場合でも、相続税申告は行なう必要があるので注意しましょう。

相続税の総額を計算する

相続人全員で納めるべき相続税の総額を計算します。

 

課税遺産総額に対して、いったん法定相続分で相続した場合の仮の税額を計算します。

 

この段階では、遺産分割でどのような結果になったかなどは問われません。この仮の税額を求めるときに、相続税の速算表が用いられます。

 

課税遺産総額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

-

1,000万円超~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超~1億円以下

30%

700万円

1億円超~2億円以下

40%

1,700万円

2億円超~3億円以下

45%

2,700万円

3億円超~6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

 

たとえば、父が亡くなり相続人が母・子2人の場合、法定相続分は母1/2・子1/4づつとなります。

 

課税遺産総額が3,000万円である場合には、母が1,500万円・子2名はそれぞれ750万円に上記の速算表をあてはめます。

  • 母=1,500万円✕15%-50万円=175万円
  • 子=750万円✕10%=75万円

となります。

 

これにより、相続税の総額は、175万円+75万円+75万円=325万円となります。

相続税の総額を実際の相続割合で分けなおす

次に相続税の総額で求められた額を、実際の相続割合で分けなおします。

 

法定相続分は遺産分割の目安を示すもので、実際にこの割合通りにきっちり分割を行なうものではありません。

 

たとえば、長男は母親の面倒を見ることを条件に自宅を相続する、という遺産分割協議がされると、実際に相続する割合は長男の方が多いということもあるでしょう。

 

そのような遺産分割の具体的内容を反映するために、相続税の総額を、実際の相続割合に応じて分け直します。

各相続人の相続税納付額を計算する

最後に、各人の相続税納付額を計算します。 この段階で考慮されるのは、配偶者控除や未成年者控除などの、個人ごとに適用される控除や、孫や受遺者などが相続財産を受け継いだ場合の2割加算などです。

 

配偶者は、1億6,000万円または法定相続分までは課税されないという強力な税額軽減の制度があります。

 

ただし、配偶者も被相続人と年齢が近いならば、配偶者が亡くなったあとに相続が発生することになります(二次相続)。

 

ひとつひとつの相続では有利な制度も、全体としてみると不利になるようなこともあるので、二次相続などを考慮した相続税対策を検討するようにしましょう。

相続税の試算をした方が良い理由

相続税の試算をした方が良い理由としては次のような理由が挙げられます。

 

  • 1自分の相続で相続税の回避・軽減のための方策を練ることができる
  • 2相続をすることになった人はスムーズな納税のための遺産分割を検討できる

自分の相続で相続税の回避・軽減のための方策を練ることができる

相続税の試算をした方がよい理由の一つとして、自分が亡くなった際に発生する相続で、相続税がかかるかどうかがわかり、生前の相続税の回避・軽減のための方策が必要かどうかがわかる、ということが挙げられます。

 

上記のように、基礎控除額を超える遺産がある場合には、相続税の申告が必要です。

 

もし遺産が相続税がかかる基礎控除額のギリギリのラインにある場合には、生前の相続税対策によって課税を回避できる可能性があります。

 

また、相続税がかかることが確実である場合にも、できるだけ相続税がかからないようにする対策を練ることが可能です。

 

税金を納めるかどうかと同様に、10ヶ月と申告期間が短い相続税申告を滞りなくするために、資産を整理したり、遺言書を作成して遺産分割で争うことがないような対策にも着手できます。

 

これから相続を考える場合には、相続税の試算をしておくことが望ましいです。

相続をすることになった人はスムーズな納税のための遺産分割を検討できる

被相続人が亡くなって、これから相続をする場合にも、相続税の基礎控除額を超える遺産がある場合には、相続税の試算をしましょう。

 

まず、上述したように相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行なう必要があります。

 

10ヶ月という期間だけ示されると長いような気がすることもあるのですが、実際には亡くなって一定期間は相続の話をしない(四十九日法要までということも多いです)、遺産の調査に時間がかかる、遺産分割に時間がかかる、ということもあり、実感としてはあっという間です。

 

時間が無くなった段階で税理士に依頼すると、特急料金が必要となることもあります。 相続税を試算して、相続税がかかることがわかれば、早めに行動をすることができます。

 

また、相続税は原則として金銭を一括で支払う必要があり、相続した物を納付する物納や、数回にわけて納付する延納は例外的なものになります。

 

相続税の試算ができれば、相続税として納付する金額をどうやって確保するかということを念頭に入れて、遺産分割をすることが可能です。

相続税がかからなくても申告は必要になる

控除・非課税の特例を利用でき、相続税がかからない場合でも相続税申告は必要です。

 

たとえば、配偶者控除(配偶者の税額の軽減)・小規模宅地等の特例・未成年者控除・障害者控除などを受けられる結果、相続税はかからないという場合があります。

 

この場合でも、相続税の基礎控除額を超えているのであれば、相続税の申告をする必要があります(相続税申告の中で、これらの制度の利用をする)。

 

相続税の基礎控除額を超えている可能性がある場合には、相続税の試算をしておくべきでしょう。

まとめ

このページでは、相続税の計算方法について、相続税の試算をしておいたほうがいい理由とともにお伝えしました。

 

相続税がかかる場合の事前の対策や、被相続人がなくなった場合に相続税申告をしなければならないか、などで、相続税の計算を検討しておくことは良いことです。

 

ただし、相続税は非常に難解であり、安易に計算をすると手続きをスムーズにすすめられなかったり、損失を被ることがあります。

 

相続税が発生するような相続では、相続税申告のみならず、不動産の相続登記や、株式の移転・事業承継などの様々な事項を考慮することが必要となることがあります。

 

なるべく早い段階から、税理士などの専門家に相談をしておくことがおすすめです。