相続コラム

相続税における未成年者控除の条件とは?計算方法や手続きも解説

相続税の基礎控除額を超える相続の場合には、相続税申告が必要なのですが、相続税申告をする際には様々な控除が受けられます。
その中の一つに、相続人が未成年者である場合の未成年者控除があります。
このページでは、相続税の未成年者控除の内容と、計算方法、手続き面での注意点についてお伝えします。

相続税の未成年者控除とは

相続税の未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合に、相続税の額から一定の額を差し引く制度です。

未成年者が相続人である場合、亡くなった親がまだ若いことが想定されます。未成年者は親による保護を受けられなくなる一方、教育などでお金がかかることが想定されるので、相続税では有利に取り扱うのが未成年者控除です。

(20歳ー相続開始の年齢)✕10万円の控除を受けることができます。

相続税の未成年者控除の条件

相続税の未成年者控除を受ける場合の条件は次の通りです。

  • 1日本国内に住所があること
  • 2財産を取得したときに20歳未満(未成年者)であること
  • 3財産を取得する未成年者が法定相続人であること
  • 4取得した財産は相続または遺贈によるものであること

日本国内に住所があること

相続税の未成年者控除を受けるためには、相続や遺贈で財産を取得したときに、日本国内に住所があることが必要です。ただし、日本国内に住所がない場合でも、以下の3つのケースでは、相続税の未成年者控除を受けることが可能です。

 

  • 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある
  • 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していない場合は、被相続人が、外国人被相続人又は非居住被相続人でないこと
  • 日本国籍を有していない人で、被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合ではないこと

財産を取得したときに20歳未満(未成年者)であること

相続や遺贈で財産を取得したときに未成年者であることが二つ目の要件です。民法4条は20歳で成年になることを規定しているので、現状は20歳未満であることが必要です。

2022年4月1日に成年の年齢が18歳に下がることに注意をしましょう。また、相続においては、まだ生まれていなくて胎児であったとしても、子として扱う旨の規定があります(民法886条1項)。


この子についても未成年者として取り扱うことができ、未成年者控除の適用を受けます。

財産を取得する未成年者が法定相続人であること

未成年者控除を受けるためには、相続や遺贈で財産を取得する未成年者が法定相続人であることが必要です。未成年者控除は、親が死亡した場合の相続人である未成年者の生活・養育のための費用を確保するために考慮された制度です。


そのため、法定相続人ではない未成年者に遺贈がされたような場合に、これを認める必要はありません。

取得した財産は相続または遺贈によるものであること

未成年者控除を受けるための最後の要件は、取得した財産が相続又は遺贈によるものであることです。生命保険金の受取人になっていた場合、みなし相続財産として遺産を受け取ります。

 

そのため、相続については相続放棄をしていたけども、生命保険金の受け取りをしていた場合には、遺産分割協議には参加しなくても、相続税の申告をしなければならず、この場合には未成年者控除を受けることが可能という状態になります。

相続税の未成年者控除の計算方法

未成年者控除の計算方法は、

  • (20歳ー相続開始の年齢)✕ 10万円

で計算します。(年齢は満年齢で計算します。)

そのため、14歳11ヶ月であった場合には14歳と計算し、(20-14=6)✕10万円=60万円と計算します。

未成年者控除は相続税額から差し引く

未成年者控除は相続税額から差し引きます。

相続税の計算は主に

  • 各人の課税価格の計算
  • 相続税の総額の計算
  • 各人ごとの相続税額の計算
  • 各人の納付税額の計算

という順番で行われます。

未成年者控除は、「各人の納付税額の計算」をする歳に税額から差し引くことになるものです。

相続税の未成年者控除の注意点

相続税の未成年者控除を受ける場合の注意点にはどのようなものがあるでしょうか。

 

  • 1遺産分割時に法定代理人の代わりに特別代理人の選任が必要な場合がある
  • 2未成年者控除が余ったときの対処法
  • 3相続放棄時の対処方法
  • 4婚姻した未成年も未成年者控除を使うことができる

遺産分割時に法定代理人の代わりに特別代理人の選任が必要な場合がある

相続税の申告をするためには、前提として遺産分割協議を行う必要があります。

 

未成年者は、法律行為を行う際には、単独で行うことができず、親権者・未成年後見人など法定代理人の同意を得ておこなうか、代理してもらうかどちらかになります。

 

これは、未成年者はまだ財産に対する十分な判断能力を持たないためです。ただ、遺産分割協議をする場合には、共同相続人が法定代理人であることがあります。

 

例えば、父がなくなり、母・子が相続人であり、子が未成年者の場合には、親権を喪失しているような事情が無い限り母はまだ親権者として法定代理人です。

 

遺産分割協議をする場合に、母が自分の立場と、子の代理人や同意見者として、両方の立場を持つことになり、母が子の利益を考えずに自分に遺産が遺産全額を取得するような可能性もあるわけです。

 

このような、取引において利害が対立するような状態のことを利益相反取引と呼んでおり、利益相反取引をする際には、未成年者の同意権・代理権を行使するために、裁判所に申立をして、特別代理人の選任をする必要があります。

 

次のような場合には利益相反とならないので、特別代理人の選任をする必要はありません。

  • 親権者である母が相続放棄をした(子だけが相続人になるので利益が対立しない)
  • 普通養子をした場合で実方の相続をする場合(親権者である養方の親は実方の相続人にはならない)

利益相反をしているかについては、判断が難しいので、是非相続に詳しい税理士に相談をしてみてください。

未成年者控除が余ったときの対処法

例えば、12歳の子の各人の相続税額が50万円であるとします。

 

この場合、未成年者控除では(20-12=8)✕10=80万円が控除できます。そのため、50万円-80万円=-30万円となり、控除が余る状態で、当該未成年者は相続税を納める必要がなくなります。

 

そして、30万円が控除しきれずに余ってしまうのですが、その分は、扶養義務者である共同相続人の相続税を控除するのに利用できます。

 

子2人で相続をして、成年者である兄が50万円の相続税額が発生する場合に、未成年者である弟の控除が30万円余った場合には、扶養義務者となる兄の50万円の相続税額から30万円を控除することができ、兄の相続税額が20万円になります。

 

誰が扶養義務を負うかについては、民法877条の規定に従うのですが、家庭裁判所の審判が必要である3親等内の親族である場合でも、現実に同じ家計で暮らしている人がいる場合には、家庭裁判所の審判がなくても扶養義務者として扱う通達があります。(相続税法基本通達1の2-1)

相続放棄時の対処方法

相続放棄がされると、相続人ではなくなるので、相続税を納めることもなくなり、当然ですが未成年者控除も適用されません。

 

ただし、繰り返しになりますが、相続放棄をしても生命保険金を受け取った場合には、みなし相続財産を受け取ったものとして、相続税の納付義務があります。

 

このときには、相続人として未成年者控除の適用を受けることができます。

婚姻した未成年も未成年者控除を使うことができる

未成年者は婚姻すると成年擬制という制度によって成年として取り扱われる制度があります。

 

ただし、これは婚姻している人が親権者の同意・代理による取引をして保護することは必要ないとするにとどまり、あくまで取引・法律行為の効力に関する規定にすぎません。

 

そのため、相続税の申告にあたっては、婚姻をしても未成年者控除を受けることができます(平17課資2-4改正)。

相続税の未成年者控除を使うための手続き

相続税の未成年者控除を使うまでの手続きの流れを確認しましょう。

 

  • 1遺産分割協議を行うために特別代理人を選任する
  • 2特別代理人には誰を選任するのか
  • 3特別代理人を選任する方法
  • 4特別代理人と法定相続人で遺産分割を行う
  • 5相続税申告を行う

遺産分割協議を行うために特別代理人を選任する

前提として遺産分割協議を行うために、特別代理人を選任します。

特別代理人には誰を選任するのか

特別代理人については特に誰でなければならないとする法律上の規定はありません。裁判所で選任する旨規定されていますが、実務上は候補者を立てておいて裁判所に申立のときに審査してもらいます。

 

提出書面である遺産分割協議案から、未成年者の保護の観点からふさわしいと判断されれば、候補者がそのまま選ばれます。 親族でも良いですし、弁護士や税理士などの士業の人でもかまいません。

特別代理人を選任する方法

特別代理人の選任は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をして行います。

 

管轄の裁判所は、「裁判所の管轄区域|裁判所ホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html)」で調べることができます。

 

申立には、

  • 申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本
  • 特別代理人の候補者の住民票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案)

を提出します。

 

申立書は、「特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)|裁判所ホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_11/index.html)」でダウンロードが可能です。

 

申立手数料800円分の収入印紙を購入して、申立書に貼り付けて提出します。予納郵券という切手のセットが必要になるので、申立をする管轄の家庭裁判所に問い合わせをして揃えましょう。

 

なお、この手続には、1ヶ月~3ヶ月程度の期間が必要ですので、相続税申告が必要な場合には早めに行いましょう。

特別代理人と法定相続人で遺産分割を行う

特別代理人と法定相続人で遺産分割を行います。遺産分割協議を行い、協議が調った場合には遺産分割協議書を作成します。

 

遺産分割協議が調わない場合には調停・審判によって確定します。

相続税申告を行う

遺産分割が終わるとすぐに相続税申告をおこないます。未成年者控除は、相続税申告の中で、控除の適用を受けることを申告書に記載して行います。

まとめ

このページでは、相続税の未成年者控除について中心にお伝えしました。未成年者の保護の観点から、税制で優遇される制度なのですが、要件の中で把握すべき事項が非常に多いです。

 

また、相続税申告の前提となる遺産分割協議にあたって、特別代理人を選任する必要がある場合が多く、手続きが複雑でいつもより時間がかかります。

 

早めに税理士に相談して、テンポよく手続きを行なうようにしましょう。