相続コラム
家族の死亡後や葬儀後に必要な手続きを優先順位を付けて解説
「身内が亡くなって相続が生じたものの、なにから手続きしたらいいかわからない」と、悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
死亡後や葬儀後に必要な手続きは期限が限られているものが多く、優先度が高い順に手続きを済ませていくことが大切です。そこで、今回の記事では家族の死亡後や葬儀後に必要な手続きをはじめ、遺産相続の流れ、相続手続きを放置した場合のデメリットについてもお伝えします。
家族の死亡後や葬儀後に必要な手続き
ここではまず、相続手続きの概要と必要な遺産相続手続きについて解説します。
★一般的な相続の流れと死亡後・葬儀後に必要な手続き
期限 |
手続き内容 |
7日以内 |
・死亡届の提出 |
10日以内 |
・厚生年金の受給権者死亡届の提出 |
14日以内 |
・国民年金の受給権者死亡届の提出 |
1ヶ月以内 |
・遺言書の確認 |
3ヶ月~4ヶ月以内 |
・相続方法の決定 |
10ヶ月・1年以内 |
・遺産分割 |
2年・3年以内 |
・死亡保険金の請求 |
まずは遺言書の有無を確認する
相続手続きは遺言書の有無によって進め方が大きく異なるため、相続が生じた時点でまずは「遺言書」の有無を確認しましょう。生前に遺言書の保管場所について聞いていれば、それほど問題にはならないものの、遺言書を残さずに亡くなってしまったという場合には注意が必要です。
また、家の中で自筆遺言書が見つかったからといって勝手に開封してはいけません。自筆遺言書を勝手に開封すると過料の対象となるほか、内容を改ざんあるいは偽造したのではないかと他の相続人から疑われる恐れが高まります。
自筆遺言書を発見した際は未開封のまま家庭裁判所に提出した上で、後日行われる検認に立ち会うようにしましょう。検認の結果、有効な遺言書だと認められれば、遺言書の内容にしたがって相続手続きを進めることができます。(※公正証書遺言の控えが発見された場合、検認は不要となりそのまま手続きを進められる)
亡くなってから7日以内に必要な手続き
亡くなってから7日以内に必要な手続きは以下の通りです。
・死亡届の提出
・火葬許可申請書の提出
まず、被相続人が亡くなった事実を法律的・医学的に証明するため「死亡診断書」の提出が必要です。
死亡診断書は被相続人が疾病等で亡くなった場合、担当医が発行することになります。また、突然死や事故死などの場合には警察によって検死がおこなわれたのち、死体検案書を受け取ることになるでしょう。死亡診断書や死体検案書はこの後の相続手続きで必要となる可能性があるので、忘れずに手元で保管しておくことが大切です。
また、死亡届も死亡診断書と一緒に手渡されるため、氏名等必要事項を記入した上で市区町村役場へ提出しましょう。この際、遺体を火葬するために必要な「火葬許可申請書」もあわせて提出しておくことで、この先の手続きがスムーズに進みます。
亡くなってから14日以内に必要な手続き
亡くなってから14日以内に必要な手続きは以下の通りです。
・世帯主変更届の提出
・公的年金および健康保険の手続き
・介護保険の喪失手続き
・公共料金の名義変更手続き
それぞれについて、解説します。
世帯主変更届の提出
亡くなった人が世帯主であり、残された世帯人数が二人以上いる場合には「世帯主変更届」を市町村役場に提出する必要があります。ただし、世帯人数が1人しかいないのであれば、次の世帯主が明らかであることから世帯主変更の手続きは不要です。
公的年金および健康保険の手続き
亡くなった人が年金を受給していた場合、受給停止の手続きをしなくてはなりません。その際、期限内に年金事務所へ年金受給権死亡届を提出し、停止手続きを行う必要があります。年金ごとの手続き期限は以下の通りです。
国民年金:被相続人が死亡してから14日以内
厚生年金:被相続人が死亡してから10日以内
もし亡くなったことを報告せずに年金を受け取っていた場合、年金の返還を求められるほか、不正受給とみなされる恐れがあります。懲役または罰金などが命じられるケースもあるため注意が必要です。
(※非相続人が日本年金機構にマイナンバーの登録をしていた場合には、年金受給者死亡届の手続きは省略可)
また、健康保険や介護保険についても資格喪失手続きが必要です。
国民年金保険の手続きは市町村役場、社会保険は加入先の健康保険組合で手続きを行いましょう。なお、被相続人が社会保険に加入していた場合、扶養家族は健康保険組合から「埋葬料」を受け取れます。
介護保険の喪失手続き
亡くなった人が65歳以上、あるいは40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合、介護保険喪失届けを提出して手続きをする必要があります。提出先は市町村役場です。
公共料金の名義変更手続き
明確な期限が定められているわけではありませんが、各種公共料金の名義変更手続きも早い段階で済ませておくことをおすすめします。利用先の電力会社やガス会社などに連絡し、必要書類等を取り寄せましょう。
亡くなってから3~4ヶ月以内に必要な手続き
亡くなってから3~4ヶ月以内に必要な手続きは以下の通りです。
・相続方法の申し立て
・準確定申告
相続方法の申し立て
被相続人が亡くなった後、相続人は3ヶ月以内に相続方法の申し立てを裁判所に対して行う必要があります。なお、相続方法は以下の通りです。
・限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ
・単純承認:被相続人の財産をすべて相続する
・相続放棄:一切の相続権利を放棄する
このうち、相続放棄と限定承認については被相続人が亡くなった日または亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを済ませる必要があります。限定承認については相続人全員の同意が必要となることから、早い段階で話し合いを済ませておくとよいでしょう。
また、相続発生後に被相続人の預貯金等の財産を勝手に使用した場合は単純承認がなされたものとみなされる点にも注意が必要です。
準確定申告
被相続人が個人事業主等で確定申告の対象者であった場合、被相続人が亡くなったことを知った日から4ヶ月以内に申告を行わなければなりません。これを「準確定申告」といい、通常の確定申告と同様の書式を用います。
なお、通常の確定申告の期限は原則として3月15日であり、3月15日以前に亡くなった場合は前年の確定申告を済ませているかどうかもあわせて確認しましょう。
亡くなってから10ヶ月・1年以内に必要な手続き
亡くなってから10ヶ月・1年以内に必要な手続きは以下の通りです。
・相続税の申告および納付
・遺留分侵害請求
相続税の申告および納付
相続税の申告および納付は、相続の開始を知ったときから10ヶ月以内に行わなければなりません。申告準備を終えておくほか、納税資金が確保できているかどうかも確認しておきましょう。
万が一支払いが難しいといった場合には延納や物納制度についても調べておくことをおすすめします。
また、相続税には「相続税の基礎控除」が適用されます。そのため、相続額が基礎控除額である3,000万円を超えない場合にはそもそも相続税が課税されません。
遺留分侵害請求
遺留分の侵害請求は被相続人が亡くなった日あるいは亡くなったことを知った日から1年以内と定められています。たとえ遺留分の侵害があったとしても、この期限を過ぎてしまうと請求が認められなくなる点に注意が必要です。
亡くなってから2年・3年以内に必要な手続き
亡くなってから2年・3年以内に必要な手続きは以下の通りです。
・死亡一時金の受け取り請求
・死亡保険金の請求手続き
死亡一時金の受け取り請求
死亡一時金とは、一定の条件を満たした際に遺族に対して支払われる年金のことです。受け取るには以下の条件をすべて満たす必要があります。
・死亡日の前日において被相続人が第1号被保険者として保険料を納めた期間が36ヶ月以上ある
・老齢基礎年金および障害基礎年金を受け取らずに亡くなった
・被相続人と生計を共にしていた親族である
また死亡一時金は保険料を納めた期間に応じて、12万円から32万円の範囲で支払われます。
死亡保険金の請求手続き
被相続人が生命保険に加入していた場合、亡くなった日の翌日から3年以内に加入先の保険会社に連絡し、死亡保険金の請求手続きを行う必要があります。
また、必要書類については保険会社によって異なるため、請求前に手順とあわせて確認しておくと安心です。
その他の必要な手続き
特に期限のある手続きではないものの、死亡後や葬儀後に済ませておくべき手続きについて解説します。
免許証・パスポートの返納
免許証やパスポートは返納義務があるわけではありませんが、いずれも法的効力を有しており、紛失や盗難によって悪用されると大きな被害を及ぼす恐れがあります。そのため、できるだけ速やかに返納手続きを済ませておくと安心でしょう。
また、免許証やパスポートを形見として手元に残しておきたい場合にはそれぞれ対応してもらうことができるので、その旨を伝えてみることをおすすめします。
クレジットカードの解約
亡くなった人がクレジットカードを契約していた場合、利用停止手続きが必要です。不正利用を防止するためにも、なるべく早めにクレジットカード会社に電話をして停止の手続きを済ませておくとよいでしょう。
携帯電話の解約
スマートフォンの契約は、相続人が通信キャリアのショップで解除ができます。必要な書類においては、会社ごとに異なることから事前に確認しておくとよいでしょう。なお、電話番号などを引き継ぐこともできるので、必要に応じて対応することをおすすめします。
相続手続き期限を過ぎてしまうとどうなる?
相続手続き期限を過ぎてしまうと、以下のようなデメリットが生じる恐れがあります。
・税金の軽減制度が利用できない
・延滞税や無申告加算税といったペナルティが生じる
・相続内容が変わってしまう恐れがある
税金の軽減制度が利用できない
相続手続きにはさまざまな税金の軽減制度が設けられている一方、期限内に手続きを行わなかった場合にはそれらの適用対象外となる恐れがあります。支払わなくてよかったはずの税金を負担することにならないよう、相続手続きは期限内に済ませるようにしましょう。
延滞税や無申告加算税といったペナルティが生じる
相続税の申告や納税をしないまま10ヶ月が経過してしまうと、「延滞税」や「無申告加算税」といったペナルティの対象となってしまいます。特に、無申告加算税は納付すべき税額が50万円に達するまでは15%、50万円を超える分に対しては20%が課税対象と決して少ない額ではありません。
書類の準備など、個人で対応することが難しそうな場合には専門家の力を借りるようにしましょう。
相続内容が変わってしまう恐れがある
相続手続きを放置した結果、相続内容に変更が生じる恐れがあります。
たとえば、両親の内どちらか1人が亡くなったにもかかわらず相続手続きを放置していた結果、その間に残った1人も亡くなってしまったというケースが挙げられます。こうなると手続きが煩雑になることはもちろん、場合によっては法定相続人の人数に変更が生じることから遺産分割協議が難航するリスクが高まります。
相続手続きを放置してしまうと、ここまでに紹介したようなさまざまなデメリットが想定されることから、相続手続きは期限内に済ませることが大切です。
遺産相続に関するご相談なら
今回の記事では家族の死亡後や葬儀後にしておかなければならない手続きや、それらの期限について優先順位を付けて解説しました。
相続手続きは人生の中でそう何度も経験するものではないことに加え、家族の死亡後や葬儀後はやることが多岐にわたることから混乱してしまう方も少なくありません。特に、仕事や家事で忙しい方や高齢で思うように動けない方にとって、書類を集めたり必要な窓口に足を運んだりすることは決して簡単なことではないでしょう。
「川口相続税サポートセンター」は川口市内では数少ない相続税に特化している税理士事務所であり、月50件以上の相続相談を受けている実績があります。
過去の事例から照らし合わせて提案ができるのが魅力です。川口市、戸田市、さいたま市が主な対応エリアで相談は無料で受け付けていますので、ご家族の死亡後・葬儀後の手続きに関することで、もし不安な点が少しでもある場合は、ぜひお問い合わせください。
沖田豊明 プロフィール
不動産と不動産の税務の専門家の両立場から不動産オーナー様の賃貸経営や相続税の申告・税務アドバイスを行っている。
また、最近は自らも不動産賃貸経営を行い、その実務経験を基に、サラリーマン大家さんの不動産投資に関する税務申告やアドバイスを行っている。
円滑な相続・資産承継を目的とした家族信託についても手掛けている。
各税理士会の支部研修等における講師業務も年間約50件程度行っている。
共著:『社長の節税と資産づくりがこれ一冊でわかる本』/『相続手続きと生前対策ハンドブック』など