相続コラム
【要注意】名義預金は相続税の対象になる! 名義預金にならないためにどうすればいいのかを徹底解説
「名義預金」という言葉を知っていますか?おそらくは知らない方が多いのではないでしょうか。
ただ相続をするときに、知らないと大変なことになる場合があります。
そこで今回は、名義預金とは何か?名義預金になるとどうなるのかを詳しくご紹介いたします。
名義預金とは
口座にお金を預けている人と口座の名義人とが異なる預金のことを言います。
簡単に言えば「被相続人の管理なのに名義人だけが他人になっている預金」のことです。
また相続において、被相続人(亡くなった方)が自分の親族のために通帳をその親族の名義で残しているお金のことを言います。
遺族の方からすれば生活するためのお金になるのですが、名義預金とみなされることで被相続人の財産とみなされ、相続税の対象となります。
被相続人の節税対策で利用される可能性があるため、相続税の税務調査で税務署が最も力を入れている分野でも知られています。
そのため逃れようにも税務調査で必ずと言っていいほど調査されます。
名義預金とみなされるケース
名義預金にみなされると相続税が発生することはご理解いただけたかと思います。
では、名義預金とみなされるケースはどのような場合があるのでしょうか?
基本的に以下の4つが考えられますので、詳しくご紹介いたします。
- 1名義人が預金口座について知らないケース
- 2亡くなった方のお金を異なる名義で預金していたケース
- 3預金が生前贈与されたものではないケース
- 4亡くなられた方が通帳と印鑑の管理をしていたケース
名義人が預金口座について知らないケース
名義人が預金口座について知らない場合は、名義預金とみなされます。
前述した通り、被相続人の財産が相続人にわたった場合には、相続税がかかります。 その課税対象の判断で大切になってくるのが、被相続人の財産かどうかです。
名義人が知らない場合は、被相続人の預金について干渉していないと推定され、必然的に被相続人の財産とみなされるため、名義預金となるのです。
今回は名義預金とみなされるよくあるケースを簡単に問題にしてみましたので、ぜひ解いてみてください。
【例】
父と息子は仲が悪い親子でした。
しかしそんな父も自分がいなくなった後の息子を心配して内緒で、息子の名義で預金を行なっていました。
しかし突然の病により父が亡くなってしまいました。
そこで遺品整理をしていた息子がタンスから息子名義の預金通帳を発見しました。
【Q】
1.この預金は名義預金でしょうか?
2.また名義預金とした場合は、その理由は何でしょうか?
【A】
1.名義預金である
2.名義人が預金口座について知らないため、被相続人の財産とみなされるから
このように家族のために良かれと思って行なった贈与も、必要な手続きを行わない場合、名義預金となってしまうので注意しましょう。
亡くなった方のお金を異なる名義で預金していたケース
続いては、亡くなった方のお金を異なる名義に貯金をしていたケースです。
上述の「名義人が預金口座について知らないケース」とほとんど同じですが、名義人が把握しているけど管理していない場合など、名義人が異なった場合も名義預金に該当します。
他人の名義であっても、被相続人が自分自身で金銭を管理していたことに変わりありません。そのためこのような場合も名義預金とみなされ、相続税の課税対象となってしまうのです。
もっとも贈与された方が未成年であった場合は、親が管理している時に亡くなったとしても基本的に名義預金とはみなされませんので、お子様がいらっしゃる方はぜひ覚えておくと安心です。
預金が生前贈与されたものではないケース
続いては、預金が生前贈与されたものではないケースです。
生前に贈与をしていなかった場合も、その預金が被相続人の財産とみなされ相続税の対象となってしまいます。
贈与されていないということは、当たり前ですが贈与されるはずであった方の財産とは言えませんので、被相続人の財産つまり名義預金とみなされ課税されるというわけです。
しかし生前贈与をしてさえいれば、名義預金とみなされることは基本的にありませんので、生前のうちに名義預金とみなされないための決定的な証拠を残しておくことが大切です。
※生前贈与の場合でも非課税枠(1年間で110万円)を超えてしまうと贈与された側は贈与税を支払わないといけませんので注意してください。
亡くなられた方が通帳と印鑑の管理をしていたケース
最後は、亡くなった方が通帳と印鑑の管理をしていたケースです。
よくあるケースとして、亡くなられた方が預金口座を開設した時に利用した印鑑を、他の口座開設の時に使用した場合が挙げられます。
この場合は、名義預金として相続税の課税対象となりますので該当する可能性が高いです。
というのも通帳や印鑑の管理を名義人ではなく、亡くなられた方が行なっていた場合は、 「亡くなられた方が簡単に預金を行うために作った口座とみなされる点」や「贈与された方の財産であると証明していない(できない)」などをチェックされてしまうからです。
そのため税務署において厳正に調査され名義預金とみなされるのです。
名義預金とみなされないようにするための対策
では名義預金として認められないためには、どうすれば良いのでしょうか?
答えは何度もお伝えしてきた通り、「贈与であると証明する」です。
そのためには以下の5つ対策が有効です。
- 1贈与契約書の作成
- 2銀行振込での贈与の実行
- 3贈与された人が通帳や印鑑を管理
- 4贈与税の申告
- 5贈与された預金を少し使う
詳しくご紹介いたします。
贈与契約書の作成
「贈与契約書を作成すること」が最善の方法の1つだと考えられます。
贈与契約書を適正に作成することができれば、贈与であることを証明する役割を持っていますので、贈与が成立していると言えるからです。
そのため税務調査に怯えることなく、預金を受け取ることができます。
また贈与とは、「双方の合意により無償で譲り渡すこと」ですので、贈与契約書一枚で完結している便利な方法とも言えます。
銀行振込で贈与の実行
2つ目は、銀行振込で贈与を実行することです。
「手渡しではなくなぜ銀行振込なのか?」 それは銀行振込の場合、贈与契約書の直筆と併せて客観的な証拠になるからです。
仮に贈与契約書を作成しなくとも銀行振込での贈与を行なっていた場合、名義預金にならない可能性が上がる証拠になります。
このように名義預金とされないためには、税務署の調査官に疑われないようできるだけ強力な証拠を残すことが大切です。
贈与された人が通帳や印鑑を管理
3つ目は、贈与された人が通帳や印鑑を管理することです。
前述した通り亡くなられた方が通帳と印鑑の管理をしていた場合、名義預金としてみなされます。
そこで大切になってくるのが、贈与された人がこれらを管理するということです。
管理する意思を示すことによって名義預金とみなされませんので、名義預金対策としての有効な手段の一つです。
贈与税の申告
4つ目は、贈与税の申告をすることです。
年間で110万円以内であれば贈与税は発生しませんが、贈与税が非課税枠である年間110万円を超える場合は、毎年贈与税の申告をすることで贈与したという動かぬ証拠となります。
よって名義預金とみなされることはないでしょう。後々に税務調査で相続税が発生するということもないので精神的にも楽です。
贈与された預金を少し使う
5つ目は、贈与された預金を少し使うことです。
預金を使わないとなると、先ほど紹介した「名義人が名義預金について知らないパターン」や「預金を管理する意思が無い」と税務署が判断し名義預金とみなされてしまいます。
この名義預金になる可能性を下げるために、贈与金を少しでも使っておくことが大切です。
税務調査で名義預金とみなされた場合
名義預金には贈与税と違って時効がありません。
つまり消滅するのはこちらの行動次第というわけです。
では名義預金として認められてしまった場合、まず何をしないといけないのか?を詳しくご紹介します。
- 1相続税の修正申告が必要になる
- 2相続税の申告漏れでペナルティの税を支払う
相続税の修正申告が必要になる
名義預金(相続税が必要)と判断された場合にまずしなければいけない事として、相続税の修正申告があります。
こちらの修正申告とは相続税の申告をした後、国税庁などが申告漏れと判断した場合に行われる申告のことをいいます。
相続税の申告漏れでペナルティの税を支払う
申告をしていないので相続税を支払うのはもちろんのこと、それとは別に遅れてしまったペナルティとして「延滞税」を支払わなければいけません。
また上記の修正申告時に、相続税を払うべき額より少なく申告した場合に課せられる「過少申告加算税」も支払わなければいけません。
※相続税を申告期限内に申告しなかった場合は別に「無申告加算税」が課せられます。
まとめ
今回は名義預金について紹介しましたがいかがだったでしょうか。
「名義預金になったらどうなるのか」また「名義預金とみなされないためにはどうすれば良いのか」を知ることができたかと思います。
親族を失い心身ともに疲弊している上に、名義預金の問題に悩まされている方がこの記事を読んでいち早く解決されることを願っています。
まずは税理士に相談してみることをおすすめします。
沖田豊明 プロフィール
不動産と不動産の税務の専門家の両立場から不動産オーナー様の賃貸経営や相続税の申告・税務アドバイスを行っている。
また、最近は自らも不動産賃貸経営を行い、その実務経験を基に、サラリーマン大家さんの不動産投資に関する税務申告やアドバイスを行っている。
円滑な相続・資産承継を目的とした家族信託についても手掛けている。
各税理士会の支部研修等における講師業務も年間約50件程度行っている。
共著:『社長の節税と資産づくりがこれ一冊でわかる本』/『相続手続きと生前対策ハンドブック』など